年間休日を減らされ有休を勝手に使われているのは違法?計画的付与とは?

年間休日を減らされ有休を勝手に使われているのは違法?計画的付与とは?


 ※この記事は2018/4/6に執筆しました。

 

先日、知り合いの方からこんな質問を受けました。

 

「以前は会社に年末年始休暇があったのだけれど、最近なぜか勝手に有休をあてられている。これって違法では?」

 

話を聞くと、2つの不思議な現象が起きているそうです。

 

1.会社の年間休日がいつのころからか減っていた

 

2.年末年始はこれまで通り休みなのが、そこに有休を使われている

 

今回はこの2点につき、事業者の取り扱いが違法なのかどうかを検証していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

会社が年間休日を勝手に減らすのは違法?

 

 

まずは1.の「会社の年間休日がいつのころからか減っていた」ことについて。

 

年間休日が減るとは、つまり労働日数が増えることになり、不利益変更になりかねません。

 

休日以前の問題もあり、賃金の単価が下がることになりかねないという重大な欠陥を抱えています。

 

労働日数が増えても給与が据え置きであれば、単純に時給換算したときに下がることになるからです。

 

この下がった分に関しては労働者側に請求権があり、一方的に不利益な変更をされたのであればなおさらです。

 

ごく普通に考えてみても、毎週2日休みだった会社で、何の前触れもなく「今日から週1休みね。給料は変わらないよ。」と言われたら、誰だって不利益な変更だと分かるはずです。

 

 

 

 

 

年間休日の変更には何が必要?

 

会社の休日は事業者が勝手きままに変えることはできません。

 

変更するにしても、「合理的な理由」が必要となり、事業者には説明責任もあります。

 

この「合理的な理由」がポイントで、事業者の一方的な判断ではなく、客観的に見て合理性があるかどうか、という観点になります。

 

「合理的な理由」かどうかは、以下のような要素を元に判断されます。

 

・変更によって労働者が不利益になるか

 

・変更の必要性や変更内容

 

・労働条件の改善状況

 

最終的に判断するのは裁判所ですが、その前に明らかに不合理であれば労基署等で指導される可能性があります。

 

 

 

 

 

休日の変更は就業規則の変更でもある

 

休日を変更するには、就業規則の改定や労働者の合意が必要です。

 

就業規則の変更には、労働者の過半数代表か過半数で組織された労働組合への意見聴取と、労基署への届け出、労働者への周知義務が必要となります。

 

就業規則の変更は、必ずしも全員の同意を得ることまでは求めていませんが、過半数代表者は管理監督者を除く労働者の代表なので、「労働者の知らないところで」とはならないのが普通です。

 

(たまに、本来は管理監督者なのに代表者を名乗ってしまう人がいますが、今回は割愛します。)

 

就業規則がない会社であれば、労働者全員に個別の同意をとることが求められます。

 

 

 

 

 

労働者の合意なしで就業規則を変えるにも合理的な理由が必要

 

判例では、合理的な理由があり、それが説明されていたことで、就業規則の変更に対する合意は不要だとしたケースもあります。

 

しかしその判例では、賃金の実質的な減額は伴っておらず、単に休日を別の日に変更したに過ぎませんでした。

 

賃金の減額が発生する場合、「変更によって労働者が不利益になる」と判断される可能性が高いため、事業者が一方的に変更することは難しいと言えます。

 

変更するにしても、給与を上げる、差額分を支払うなどして不利益のないようにする必要があります。

 

 

 

 

労働基準法の年間休日規定はどうなっている?

 

労働基準法には年間休日を定めた規定はありません。

 

休日の規定としては以下のものがあります。

 

第35条です。

 

1.使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。

 

2.前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

年間休日を変更する場合でも、少なくとも上記の規定はクリアする必要があります。(めちゃくちゃ少ない年間休日になり得ますが)

 

 

 

 

 

年間休日を減らすのはそう簡単ではない

 

ここまでの内容をまとめると、

 

・年間休日自体を減らせないわけではないが合理的な理由が必要

 

・合理的な理由がない不利益変更は違法にあたる可能性が高い

 

・いつのまにか年間休日が減っているなら説明や手続きの経緯を確認すべき

 

ということが言えます。

 

年間休日を減らし、さらに実質的な賃金の減額を伴う取り扱いをすることは、そう簡単ではありません。

 

冒頭の質問に戻ると、まず1つめにすることとして、労働者側は、年間休日が減らされた経緯を整理し、不利益な取り扱いをされているのかを確認してみることが必要となります。 

 

 

 

 

 

年末年始の休みに有休を使われているのは違法?

 

 

次に、年末年始の休みに、個人の有休をあてることが違法かどうかのお話です。

 

これについては、「計画的付与」という制度を知るところから始めます。

 

 

 

 

有給休暇の計画的付与とは?

 

有給休暇は、基本的には労働者の自由に使えるものですが、事業者には「計画的に付与する」ということが認められています。

 

具体的には、労働者が持つ有休の「5日を超える部分の有休」を事業者が計画的に与えることができる制度です。

 

これは、日本の有休消化率が先進諸国に比べて低いこともあり、労働者の有休消化率をアップさせ、労働者をしっかり休ませて生産性を上げることが目的とされています。

 

 

 

 

5日を超える部分とは?

 

労働者が持っている有休は、「5日は自由に使わせないとだめだよ」ということです。

 

たとえば、20日の有休を持っている労働者では、15日分計画的付与の対象となります。

 

20日全部を計画的付与の対象とはできません。

 

5日については、労働者が体調不良のときに休むなり私用なり、好きに使っていいということです。

 

 

 

 

計画的付与をする条件

 

計画的付与についても、事業者が勝手におこなうことはできません。

 

一番大切な条件は、「労使協定を締結すること」です。

 

会社が勝手に労働者の知らないところで「計画的付与という制度があるのだから、今年の夏季休暇は有休をあてよう。」としてはいけません。

 

締結した労使協定は労基署に届け出る必要はありませんが、計画的付与について就業規則に定めておく必要があります。

 

「何か勝手に有休を充てられている、これは計画的付与なのだろうか?」と思ったら、まずは就業規則を確認してみるといいですね。

 

 

 

 

 

計画的付与の仕方はいろいろある

 

計画的付与にもいろいろな与え方があり、たとえば以下のようなものが一般的です。

 

・会社全体を対象とする

 

・特定のグループを交代で対象とする

 

・個別に付与する

 

冒頭のように会社の年末年始休暇にあてる場合は、会社全体を対象としているのかもしれませんね。

 

 

 

 

計画的付与を拒むことはできるの?

 

計画的付与が定められた時点で、労使協定が締結されていることが前提なので、労働者はそれを拒むことは原則できません。

 

正式な手続きを踏んでさえいれば、労働者は計画的付与に従って休むことになります。

 

 

 

 

 

まだ有休が発生していない労働者はどうなるの?

 

ここで、まだ有休を持っていない労働者はどうなるのか?という疑問が沸くと思います。

 

有休は労基法上、入社して6ヶ月経過後に付与されますので、たとえば入社が10月の労働者について、年末年始の計画的付与の対象にできるのかという話です。

 

選択肢は主に2つ考えられ、特別休暇を与えるか、休業命令をだすということです。

 

有休がない以上、計画的付与の対象とはなりません。

 

その労働者は、他の労働者が計画的付与で休む間も労働する権利が発生します。

 

しかし、出勤者がいると光熱費もかかりますし、他の労働者がいない状態で働かせることは何かしらのトラブルに対応できませんので、出勤は現実的ではないでしょう。

 

そこで、会社が有休ではなく特別休暇として(有給で)休ませる方法をとります。

 

特別休暇は困ったときの便利な休暇ですね。

 

 

 

 

他の労働者からの不公平感を回避するには?

 

しかしこの場合、他の労働者からすると「有休を使わずに有給の特別休暇をもらえるなんてずるい」となりかねませんよね。

 

この場合、休業命令で賃金の6割を支給することで対処する方法もあります

 

計画的付与は会社の都合なので、会社が「休業を命令する」形を取るというわけです。

 

休業命令する場合は最低補償として賃金の6割支給が義務づけられていますので、それでよしとする方法です。

 

これなら、他の労働者から見た不公平感は減ります。

 

「有休を使わずに6割ももらえるなんてずるい」と考える人も中にはいるかもしれませんが、計画的付与とのバランスを考えると、落としどころとしては適しているのではないでしょうか。

 

 

 

 

自分が勝手に有休を取得し過ぎてしまった場合は?

 

これは、有休を取得し過ぎてすでに残日数が少ない労働者も同じです。

 

自分の都合で有休を取得し過ぎてしまった以上、特別休暇は与えられず、休業命令として6割補償になる可能性の方が高いかもしれません。

 

特別休暇だと他の労働者から不満が発生しやすいですものね。

 

 

 

 

年末年始に有休をあてるのは違法ではないが労使協定が必要

 

計画的付与についての今回の内容をまとめます。

 

・年末年始休暇は有休の計画的付与の対象となり得る

 

・計画的付与は就業規則に定めることと労使協定締結が必要

 

・有休がない労働者には個別の対応が必要

 

となり、条件をクリアしていれば、年末年始に有休をあてること自体は違法ではないと考えられます。

 

 

 

 

冒頭の質問は違法なのか?

 

ここで、冒頭の質問に戻ります。

 

「以前は会社に年末年始休暇があったのだけれど、最近なぜか勝手に有休をあてられている。これって違法では?」でしたね。

 

もう1度、2つの要素に分けて考えてみましょう。

 

1.年間休日を減らしたことに合理的な理由や説明があったのか?

 

2.適切な手順を踏んだうえで計画的付与がおこなわれたのか?

 

もし、合理的な理由がなく年間休日を勝手に減らされ、何の手続きもなしに計画的付与とされていたのであれば、それは違法である可能性が高くなります。

 

場合によっては、人事課やコンプライアンス部門、労基署に相談するといった手段も考えられるでしょう。

 

 

 

 

本来の目的と違うのでおかしいと考えることもできる

 

そもそも計画的付与が、労働者の有休消化率をアップさせ、労働者をしっかり休ませることが目的であることを考えると、年間休日を減らしてそこに計画的付与をあてることはおかしなことです。

 

労働者は結局、年間に休める日が増えているわけではないうえに、自分が自由に使える有休が減っていることになるのですから。

 

とはいえ、目的に沿っているかどうかは口で何とでも言いようのある話なので、これを理由に違法を主張するのは難しいでしょう。

 

会社というものは、あの手この手を使って、労働力をいかに安く使い、自分たちだけが得をする方法を考えます。

 

労働者のためにある法律も、自分たちの都合のいいように解釈します。

 

こうして法律上の「グレーゾーン」が発生していくわけです。

 

 

 

 

 

いろいろなことをする会社に対して労働者ができること

 

労働者としては、そういう会社の考え方を把握し、いつでも会社に反論できるように、会社をいつ見捨ててもいいように準備しておくことも大切です。

 

具体的には、

 

・法律上の知識を備えておく

 

・労働者のためを考える会社に転職する

 

・自分一人で稼げる力を身につけておく

 

・他の労働者との協力体制を築いておく

 

といったことですね。

 

 

 

 

最後に

 

いかがでしたか?

 

今回は年間休日と有休の計画的付与の2つについてのお話でした。

 

事業者の取り扱いが違法かどうかは、まずは具体的にどんな手続きが踏まれているかを知る必要があります。

 

「〇〇だから違法!」とは単純にいかないのが難しいところですが、大切な労働条件について、少なくとも労働者は経緯を知る権利がありますよね。

 

個別の事案が発生した場合、どんな流れで、どんな理由でおこなわれたことなのかを整理してみるところから始めてみましょう

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