社会保険料は原則翌月徴収。入社月に社保料が引かれていない理由とは?

社会保険料は原則翌月徴収。入社月に社保料が引かれていない理由とは?


 ※この記事は2018/3/30に執筆しました。

 

「お給料から社会保険料が引かれていません。手続き、間違っていませんか?」

 

「あ、今月新しく入社された〇〇さんですね。間違っていないですよ。」

 

「でも社会保険料が何も引かれてないですが...。」

 

「安心してください。来月からしっかり徴収しますので。」

 

これは、わたしが給与担当をしていたときに実際に受けた質問です。

 

お給料から社会保険料というものが差し引かれるという事実だけを知っている方は、入社月になぜ引かれていないのか、分かりにくいポイントなのかもしれませんね。

 

というわけで今回は、社会保険料が控除されているタイミングについて解説します。

 

 

 

 

 

 

 

社会保険料は翌月から控除されるのが原則

 

社会保険料は入社した月から発生しますが、実際の徴収は、入社月ではなく入社した翌月から控除されるのが原則です。

 

4月入社の方は、5月支払の給与から控除され、その内訳は4月の社会保険料です。

 

冒頭のケースでは翌月徴収の原則にもとづいて、入社月の給与からではなく翌月の給与から徴収されるように手続きしてあったので、何の問題もなかったというわけです。

 

「原則」というのは、社会保険料は翌月徴収の会社が多いということです。

 

会社の取り決めで当月徴収の会社にしているケースもありますが、割合的には翌月徴収の会社が圧倒的に多いようです。

 

 

 

 

 

社会保険料が翌月控除できる根拠

 

なぜ社会保険料を翌月控除にする会社が多いのか、きちんと根拠条文があります。

 

以下は健康保険法第167条です。(厚生年金保険法でも同じような条文があります)

 

事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

 

法律で、「前月分の保険料を報酬から差し引いていいよ。」と言っているわけです。

 

「〜できる」なので、前月から差し引いてもいいし、そうでなくてもいい(当月からでもいい)という解釈になりそうですが、実際には「当月控除は違法である」と考える専門家も多いです。

 

「本当は翌月控除だが、罰則がないため事業主が勝手に当月控除にしているだけ。」と言う人もいます。

 

年金事務所や税務署等の解釈としては、「法律上は翌月控除が好ましいが、当月控除であっても悪質性がなければOK」としていることが多いようです。

 

 

 

 

 

なぜ翌月控除にする必要があるのか

 

原則は翌月控除ではありつつも、当月控除でも翌月控除でも一応かまわないこととされている社会保険料ですが、実際には多くの会社で翌月控除にしています。

 

主な理由は2つです。

 

 

 

事業主の納付期限は翌月

 

1つは、事業主の納付期限が翌月末日だからです。

 

社会保険料は事業主負担分と従業員負担分がそれぞれ折半ですが、納付先は結局同じで、事業主が納付します。

 

事業主は、事業主負担分だけでなく、従業員の給与から天引きした従業員負担分も、一旦預かっておき、それを日本年金機構や健康保険の保険者に支払うわけですね。

 

事業主負担分に関しては、翌月にならなければ前月の変動(入社や退社など)も含めたトータルの保険料が確定しませんので、

 

納付額の正確性を考えても、翌月が納付期限になるのはごく自然なことだとも言えます。

 

従業員負担分は、従業員から預かった保険料と、納付するときの保険料の額が同じ方が確認するときに分かりやすいです。

 

従業員負担分+事業主負担分=納付分 ※

 

となるはずなので、万が一ミスがあったときには発見しやすくなります。

 

従業員から預かる分だけ当月分、事業主の分は前月のものとすると、少し分かりにくいですね。

 

※児童手当拠出金もあります

 

 

 

 

 

当月徴収だと入社時にマイナスが発生する恐れがある

 

2つめの理由は、入社時には従業員の給料が少ない、またはゼロの可能性があるからです。

 

1日入社の人であれば入社月は1ヶ月分の給与が発生しますが(当月支給の場合)、途中入社の人もいますよね。

 

途中入社だと、その分給与は少なくなります。

 

また、こんなケースだと入社月の給与はゼロです。

 

3/15日が給与の締め日、3/20日に入社、3/25日が給与支給日

 

給与の締め日を過ぎた後に入社していますものね。

 

このケースで当月控除としてあると、給与が無いのに保険料だけ引かれるという残念なことが起こりえます。

 

社会保険料は日割りではなく、あくまでも1ヶ月分を徴収しますので、給与が少ないかゼロだと社会保険料を引ききれず、マイナスになってしまう恐れがあるというわけです。

 

マイナスになると、翌月で調整してといった面倒なことが発生するので、まぁ避けたいことです。

 

従業員の気持ち的にも、入社していきなりマイナスなんて嫌でしょうし。

 

主にはこの2つの理由で翌月徴収にする会社が多いのではないかと思います。

 

要するに、翌月徴収にしておいた方が何かと都合がいいということです。

 

 

 

 

 

なぜ当月控除にする会社があるのか

 

では、翌月徴収の方が何かと都合がいいにもかかわらず、なぜ当月徴収にする会社があるのでしょうか。

 

これは、今月分は今月分、翌月分は翌月分とした方が、徴収時の分かりやすさがあるからです。

 

また、翌月徴収の場合は退職月の翌月まで請求する必要があることから、従業員から社会保険料を徴収できずに困ることもあるからです。

 

辞めてしまった人は連絡がつきにくく、「ドロン」してしまう可能性もあります。

 

実際はこうした事態を防ぐため、退職月に2ヶ月分の社会保険料を差し引くことも可能ですが、退職月の給与が少ない場合には、2ヶ月分も差し引くことができず、結局振り込んでもらうケースもでてきます。

 

もともと当月控除であれば退職時の徴収漏れが発生しにくいので、何かとトラブルが多い会社では、徴収漏れを防ぐためにあえて当月徴収にしていることもあります。

 

 

 

 

 

雇用保険料は当月控除なのはなぜ?

 

 

疑問にあがるのが、「入社月には社会保険料は徴収されていないのに、雇用保険料は徴収されている」ということです。

 

一般的に社会保険とは、厚生年金と健康保険(介護保険含む)のことを指すことが多いです。

 

雇用保険も広義の意味では社会保険と呼ぶことがありますが、会社での手続きに関しては「労働保険」というくくりになります。

 

つまり、社会保険と雇用保険とは全く仕組みが異なるもので、徴収に関してもわけて考える必要があります。

 

雇用保険料は「賃金の支払いの都度」徴収することになっています。

 

冒頭のような当月入社、当月給与ありのケースでは、社会保険料は引かれていないが、雇用保険料は引かれていることになります。

 

 

 

 

毎月ほぼ変わらない社会保険料に対して雇用保険料は毎月変わる

 

社会保険料の場合、標準報酬月額と呼ばれる、保険料算定の基礎となるランクのようなものがあります。

 

入社時にはまだ給与支払の実績がありませんが、基本給や一定の手当、想定できる残業などをもとに、

 

「今後これくらいの報酬になるだろう」と考えられるランクによって社会保険料が決定されます。

 

そして、基本的には毎月同じ社会保険料が引かれることになります。

 

一方、雇用保険料は、賃金支払いの都度計算(給与総額に雇用保険料率を掛けて計算)されるため、その月の給与が変動すれば雇用保険料も変動します。

 

月の途中入社で給与が少なければ、その分雇用保険料も少なくなるため、社会保険料のように給与マイナスが発生しにくいですね。

 

こうした計算上の違いもあり、社会保険料は翌月徴収、雇用保険料は当月徴収でも不便がないのです。

 

 

 

 

入社時だけでなく退職時にも注意が必要

 

ここまで、社会保険料が原則翌月徴収であることやその理由、雇用保険料との違いを紹介しました。

 

社会保険料が翌月徴収の場合、入社した月の給与からは天引きされませんので何となく「ラッキー」と感じる方もいるかもしれません。

 

控除が少ない分、手取りが多い気がするからです。

 

しかし、実際には別にラッキーでも何でもなく、それは退職時に感じることになります。

 

翌月徴収の会社では、退職月には退職「前月」の社会保険料を徴収されますね。

 

退職する「当月」の分の社会保険料は、退職した翌月まで請求されるか、退職月に「前月分」と「当月分」の2ヶ月分を徴収されるかのどちらかになります。

 

当月徴収も翌月徴収も、徴収のタイミングがずれるだけで、トータルで控除される社会保険料は結局同じである点は覚えておきましょう。 

 

 

 

 

 

最後に

 

いかがでしたか?

 

今回は社会保険料が原則は翌月徴収であるというお話でした。

 

翌月徴収の会社が多いですが、中には当月徴収としている会社もあります。

 

年度替わりを迎え、新しい環境で働かれる方も多いかと思いますが、会社によって取り扱いに違いもありますので、あまり慌てずにおきましょう。

 

疑問に感じた場合は冒頭の方のように事務担当者に聞いてみるといいですね。

 

 


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